TEL.0247-62-1250福島県田村郡三春町貝山字泉沢100-1

理事長所信


石井聡一
所信  一心一徳 ~未来を昇華させるために~
【はじめに】
 私は田村市の北東部に位置する小さな集落で生まれ育ちました。
 かつて浜通り地方と中通り地方を結ぶ重要な宿場町として栄えたこの地は、先人たちが紡いでくれた歴史や伝統、豊かな自然環境に恵まれ、四季折々の風景が感じられる地域であります。日常生活を送る中で、決して利便性が高いところではありませんが、地域に住み暮らす一人ひとりが地域を想い、ともに助け合い、ともに行動する強いコミュニティーが現在も存在しています。そして何よりも、地域の子どもたちをまるで自身の家族であるかのように育む愛情や人情の深さが魅力の地域であります。
 そんな環境で成長させていただいた中で、人と人とのつながりの大切さ、人を思いやる心、常に感謝を忘れないことなど、「ひと」がまちを構成する最も重要な要素であることを学ばせていただきました。段々と自身の将来を考えるようになり、「育ててくれた方々に恩返しがしたい」、「地域のために役に立つ仕事がしたい」という思いが醸成され、公務員という仕事を目指すことを決意しました。現職に就いて以来、様々な「やりがい」を感じる一方、「行政ではできない」、「民間がやるべき」といったどこか他人事のような、いわば「行政の限界」に直面し、戸惑い悩むことが多くなりました。
 そんな時、同じ公務員でもある青年会議所の先輩から声をかけていただき、青年会議所に出会うことができました。職種や立場がそれぞれ異なる会員が同じ志を持ち、集い、地域に住み暮らす方々のために全力で行動するその姿に感銘を受けるとともに、「青年会議所でしかできない」「青年会議所だからこそできることがある」と確信しました。
 今、日本は、急速に進行する少子化とその背景にある若年層の将来不安への対応、雇用形態や年齢、性別等を問わず誰もが暮らしやすい包摂社会の実現、気候変動や新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえた持続可能な経済社会の構築など、私たちの意識の変化や社会変革を求める構造的な課題に直面しています。そして、これらの課題は、私たちの住み暮らす田村圏においても例外ではありません。
 スローガンに掲げた「一心一徳」は、大勢の人が共通の幸福(しあわせ)のために心を一つにして団結することを意味します。
 私たち青年会議所においても「時代の転換点」とも言える今、様々な課題の克服に向け、一人ひとりが高い志を持ち、一致団結し、新時代にふさわしい社会を創造していかなくてはなりません。

【主体性を育むひとづくり】
 まちづくりの根幹は、ひとづくりであります。ひとがあってまちが成り立ち、ひとの活躍によってまちに賑わいや潤いが創出されるのであり、そして、その原動力となるものは一人ひとりの「主体性」であると考えます。
 一人ひとりが住み暮らすまちをより良くするためには、まずは自らが足を運び、目で見て、話を聞き、課題を把握し、その上で、どうすればまちがよくなるのかを考え行動する。他人事ではなく、自分事として捉えることが必要不可欠であります。
 田村圏の各自治体においても、テレワークセンター整備や就業・定住支援といった様々な施策を展開し、新たな人流を生み出しています。しかしながら、地域住民や地域団体などのコミュニティーとのつながりが形成できず、魅力的な取組みが認知されない、活動が継続できないといった現状も見受けられます。
 選ばれ、そして、輝き続けるまちとなるべく、田村圏に住み暮らす方、つながりがある方の中から一人でも多くの方が田村圏を見つめなおし、田村圏をより良くしようという、すなわち、「田村圏に関心を持って、関わろうとする想い」を醸成することが重要です。
 また、地域にとって次代を担う子どもたちはかけがえない宝であります。しかしながら、近年は新型コロナウイルス感染症の影響により、まちの魅力を知る、地域に住み暮らす方々と触れ合う機会が失われてしまいました。5類感染症に移行し、少しずつ日常が戻りつつある今こそ、改めて、地域と関わる機会を創出し、将来、私たち現役世代はもちろんのこと、子どもたちが住み暮らし続けたいと思えるまちづくりを進めていかなければなりません。
 「田村圏の良さは何か?」と問われた時、私は「ひと」と答えます。
 田村圏に住み暮らすひとが好きで、田村圏のまちを誇りに想い、そして、田村圏の将来や課題を自分事として考え、行動する。そんな主体性をもつことがリーダーであり、リーダーがまちの魅力を創り上げています。
 この誇れる地域資源をさらに磨き上げる「ひとづくり」を展開してまいります。

【共感し成長を続ける仲間づくり】
 令和6年1月現在、田村青年会議所の会員数は21名であり、会員の平均年齢は36歳となっており、会員数はもとより、在籍年数の短さにより、組織の存続や運動・事業の継承が危ぶまれる状況となっています。
 これまで先輩方が築き上げてこられた田村青年会議所の歴史を紡ぐとともに、これまで以上に発展・成長していくためには会員の確保は喫緊の課題であります。
 様々な運動・事業を実践している現在においても、「青年会議所は何をしている団体なのか」といった声は度々、聞こえてきます。
 青年会議所への入会は、候補者に対していかに青年会議所の魅力を伝えられるか、意識を変えることができるかが重要であり、会員一人ひとりが改めて青年会議所の意義や理念を再認識することが必要不可欠です。
 単に青年会議所に入会するだけでは意味はありません。一人ひとりが地域や自身と向き合い、あらゆる面で行動に移していかなければなりません。いわば即戦力となる会員を迎えるためには、むやみやたらに入会を勧めるのではなく、青年会議所の唯一性を正しく伝えることが重要であります。
 また、令和5年6月に政府決定された「女性活躍骨太の方針2023(女性活躍・男女共同参画の重点方針2023)」や同年6月に公布された「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」で示されるとおり女性活躍、共生社会、包摂社会の実現に向けた取組みが進められる現代社会において、性別、年齢、職業等によらず、誰しもが地域のリーダーとなる機会を提供することが必要です。
 青年会議所がどういった団体かを理解して入会するケースは多くありません。私は入会後、運動や事業を通じて、さらには、福島ブロック協議会アカデミー委員会や県内各地の青年会議所のメンバーを通じて、青年会議所の本質を学ばせていただき、その過程で、これまでの日常では出会えなかった多くの人に出会い、青年会議所でしか得ることのできない経験を積むことで、自身を成長させることができました。
 青年会議所は、多様な人財との出会い、将来にわたって切れることのない人脈を形成できるだけでなく、事業や運動、そして、自身の行動を通じてリーダーシップを学ぶことができる唯一無二の団体であると確信しています。
 このかけがえのない想いを一人でも多くの方と共感し、共に成長を続けることができる「仲間づくり」を展開してまいります。

【多様なパートナーシップで築くまちづくり】
 2022年度から開催している「たむら愛郷祭」では、田村圏内の飲食店や生産者、伝統文化団体、企業、各商工会青年部、行政等の様々な関係機関と協働することで、事業を成功裏に導くことができたほか、参加者間において新たなつながりを創出することができました。また、磐越東線を利用した来場者へ記念品を配布し、磐越東線の利活用を図るとともに、改めて磐越東線の重要性を認識いただく効果をもたらしました。
 また、2016年に公益社団法人青森青年会議所と友好JCを締結して以降、新年会への参加等を通じてお互いの交流を深めるとともに、切磋琢磨してきました。2023年度においては、一般社団法人一関青年会議所及び一般社団法人あぶくま青年会議所と歴史的な背景をきっかけとして、合同事業を実施するなど新たな交流がスタートしました。
 まちづくりは、一個人や一団体だけでは成すことはできず、多種多様な人財や団体との連携によって成すことができ、更なる成果や効果をもたらします。
 全国の青年会議所においても、自治体、企業、社会福祉協議会や大学との間で連携協定を締結する事例が増加していることからも、その必要性・重要性を窺い知ることができます。パートナーシップの構築や連携した事業は、運動・事業への運営協力や人事交流、青年会議所会員としての入会といった人的側面のほか、専門的知見やノウハウの共有といった知的側面においても高い効果をもたらします。
 2023年10月2日、田村市、三春町、小野町は2021年3月に解散していた田村地方市町長会を再度設立しました。田村圏が一体となる重要性や有効性が見直される今、青年会議所としてもこのチャンスを捉えた運動を進めていかなければなりません。
 磐越東線については、利用者が激減している現状は変わりません。「生きたインフラ」である鉄道は、いかに「活用するか」が重要であり、利用者だけでなく地域一体となり知恵と努力を結集し、将来のあるべき姿を議論し、行動していかなければなりません。
 地域のために貢献したい、より良くしたいと考える人財や団体は、青年会議所だけではないはずです。同じ志のもと、相互理解し、多方面からアプローチすることで地域課題の解決のほか、地域資源を高付加価値化させることとなり、ひいては、田村圏の更なる発展に寄与するものと考えます。
 多様なパートナーシップで築く「まちづくり」を展開してまいります。

【胆識を鍛える組織づくり】
 「修練」「奉仕」「友情」という三信条のもと、「明るい豊かな社会」の実現に向けて社会変革を起こす団体、そして、地域のリーダーや地域をけん引する人財を育成する団体が青年会議所です。
 「平成」の元号の発案者であり、戦後の歴代総理の多くが師事した安岡正篤氏の教えに「三識」があります。「三識」とは、「知識」「見識」「胆識」の三つであり、このうち、現実の困難に直面してそれを乗り越えるべく行動することを意味する「胆識」こそがこれからのリーダーにとって必要不可欠な力であると考えます。
 JAYCEEは、確固たる信念と強い意志のもとに、目標に向かって行動しなければなりません。知識、見識がどれだけ優れていても行動しなければ意味はありません。
 行動するためには、前提として、自己研鑽に努めるとともに目的意識を持つことであり、その上で、明確な役割と責任が必要です。
 はじめから困難を乗り越えることは容易ではありません。だからこそ繰り返し行動し、前進することにより、成果や効果がもたらされるとともに、自己の成長にも繋がるのです。さらに、在籍年数の少ない会員や新入会員に対しては、全員がスポンサーシップの自覚を持ち、支えることで組織力の向上を図ることができます。
 青年会議所は地域社会に信用され、地域に必要とされる団体でなければなりません。「世界を動かそうと思ったら、まず自分自身を動かせ」と古代ギリシアの哲学者であるソクラテスの言葉にあるように、会員一人ひとりが自ら積極的に行動できる「組織づくり」に取り組んでまいります。
 1949年、「日本はこの先どうなるのだ」という今以上に混沌とした戦後の時代背景の中、全国各地で同じ志を持った若者が立ち上がり、青年会議所運動は始まりました。この田村圏も私たちの先輩方が奮起し、1982年10月に田村青年会議所が産声を上げました。そして今もその想いは引き継がれ、地域の為に今の時代、何が大事で何が必要か、同じ志を持つ仲間と共に時間を共有し、悩み、その先の「明るい豊かな社会」実現へ向けて日々運動・活動しています。まさに私たちが目指す三信条です。
 近年、経験が浅い会員の割合が増えています。せっかく入会してもなかなか参加が叶わず毎回出席するのは決まった人ばかりで、例会なども出席率が低いのが現状です。先ずは私たちの組織の一人ひとりが幸福を感じ、周りを巻き込めるような存在とならなくてはなりません。お互いを尊重し合い、理解することも大事でしょう。この地域に必要とされるリーダーとなる人財を育成すべく、強固な組織づくりを推進します。その為に会員一人ひとりの機会を実りある、共に成長できる機会の提供となるよう心掛け、参加したくなるような場を設け、同じ想いを共有します。

【さいごに】
 2024年度は田村青年会議所が誕生してから43年目を迎えるだけでなく、17年振りに福島ブロック協議会主催による福島ブロック大会を主管する貴重な一年となります。
 福島ブロック協議会運動の最大の発信の場であるこのブロック大会において、2022年度からの集大成となる「たむら愛郷祭」を開催し、田村圏の魅力を最大限発信するとともに、先輩方が築き上げてこられた「田村は一つ」を体現したいと考えております。
 田村圏に関心を持ち主体的に関わる方や仲間を一人でも増やし、会員一人ひとりが運動や事業を通じて自己成長を図るとともに、多様な人財・団体等とともに連携しながら、「明るい豊かな田村圏」の実現を目指し、粉骨砕身の覚悟で邁進してまいります。

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